損害論⑤・装具等の費用

交通事故の被害に遭い、交通事故に基づく損害を加害者ないし保険会社に請求する場合、具体的な損害額がいくらであるかということが争いになります。今回は、その中でも装具等の費用について解説致します。

 

1 装具等の費用の基準

後遺障害により失われた身体機能を補助し生活上の困難を軽減するため、身体に装備しあるいは身に携えて使用する機材の購入費用は、必要かつ相当な内容であれば損害として認められます。

もっとも、これらの装具等の将来の買い替え費用については、将来取得するはずだった利益の補償を現時点で一括して支払いを受けることになるため、将来の運用利益を控除すべきとされています(これを中間利息控除といいます。)。

 

2 介護用品の価格水準

 重度の後遺障害が残ってしまい、自宅介護を行う場合、種々の介護用品を揃える必要がありますが、この介護用品の価格水準をどのように定めるかがよく問題となります。これについては、高級品などを用いる必要性と価額の相当性による判断をすることになります。

 

3 判例

東京地裁平成22年2月12日判決では、被害者に四肢体幹麻痺等の重度の後遺障害が残った事案につき、被害者には、「四肢体幹麻痺の障害があり,被害者が電動車椅子を使用することは相当な措置ということができる。そこで,価格の相当性を検討すると,被害者には、強度のある車椅子が必要であって,そのために車椅子自体の価格がある程度高額になることはやむを得ないと考えられる。もっとも、スマートシート(特殊電動ティルト及びリクライニングシステム)については、被害者の移動の便宜になるものではないことからすると、付属機器を含めた電動車椅子の価格は全体として高額すぎるというべきである。そこで、電動車椅子の購入費用(280万円)のうち,本件事故と相当因果関係のある相当な損害は140万円と認められる。」と判示し、被害者の後遺障害の程度及び車椅子の性能等を加味して、電動車椅子の購入費用(280万円)のうち140万円を損害として認めました。

 

4 最後に

 交通事故における損害額の計算は、一般の方には判断が難しいものと思います。当事務所にご依頼いただければ、妥当な損害額を判断し、加害者及び保険会社に対し適正な額を主張致します。

大阪A&M法律事務所では交通事故の被害者の方の相談をお待ちしております。