人身傷害補償保険のご紹介

人身傷害補償保険は、自動車等の運行等に起因する事故によって人身損害を被った者を被保険者とし、被保険者自身の過失割合にかかわらず、保険約款に定める基準によって算定された損害額の全額が支払われる仕組みの保険です。「人傷」などと呼ばれます。本稿では、この人傷についてご紹介します。

人傷が有用な場合

人傷は、被保険者の過失割合にかかわらず、保険約款の規程に従って損害額の全額が支払われる保険ですので、被保険者の過失割合が大きい場合、加害者が逃亡等して所在が不明な場合、加害者が無資力の場合などに、被保険者の被害を回復するために非常に有用な保険です。

人傷の支払基準について

保険約款に定める人傷の算定基準は、裁判で用いられる基準と異なります。そのため、人傷基準の損害額は、多くの場合、加害者に対する損害賠償請求訴訟において認定される損害額と一致しないことになります。

被保険者に過失がない場合、人傷基準損害額は、裁判基準を下回ることが多いため、人傷保険金を先に受領した被保険者は、さらに人傷基準の損害額と裁判基準の損害額の差額を加害者に対して請求することになります。

被保険者に過失がある場合には、被保険者は人傷の保険金を先に受領することもできますし、加害者から損害賠償額を受領した後で、保険会社に対し、自らの過失分に相当する人傷の保険金を請求することもできます。

人傷保険の充当の順番

加害者に対する損害賠償請求訴訟を提起しており、被害者が任意保険の支払いを受けている場合には、裁判基準で算定された損害額から任意保険の既払金額が控除され、残額があれば、その金額の認容判決が出ることになります。

人傷保険の場合には、まず被害者の過失部分に充当されるというのが判例(最高裁平成24年2月20日)の立場ですので、人傷の保険金を受領している場合でも、裁判で認定された過失割合の金額を下回ってさえいれば、最終的に得られる金額が下がることはありません。

しかし、自賠責保険金は遅延損害金に先に充当されますが、人身傷害補償保険金は元本に先に充当されるものと解されています。したがって、加害者から損害の賠償を受領する前に人傷保険金を受領してしまうと、訴訟提起する場合に認められる遅延損害金の金額が少なくなってしまうということになり、不利益になることがありますので、人傷の保険金を先に受領するか否かは、速やかに人傷の保険金を受領しないと生活できないなどの事情も考慮し判断する必要があります。

最後に

交通事故に関する保険の仕組みがわからないとお困りの方は多々いらっしゃると思います。交通事故に関する保険には、今回紹介した人傷保険のみならず、健康保険、労災保険、車両保険、自動車保険に付帯されている弁護士特約の規定など、様々あり、交通事故の被害者を救済する仕組みがたくさんあります。

大阪A&M法律事務所は、交通事故事件を多く扱っており、保険でお困りの方へのアドバイスができます。交通事故でお困りの方はぜひともご相談ください。