交通事故の被害者が請求できる損害

交通事故の被害者が請求できる損害としては、主に以下にあげるものがあります。以下に示した金額は、裁判所の判断を基準とした目安(いわゆる裁判基準)ですが、任意保険会社は、各社で、一般に裁判基準より低額に設定した独自の内部基準を持っています(いわゆる任意基準)。裁判にまで発展すれば、裁判基準をベースとして賠償額で決まりますが、示談段階では、保険会社は任意基準を提示してくることがほとんどです。しかし、示談段階でも、弁護士が代理人となり、しっかりと交渉していくことで、裁判基準に準じた賠償額を獲得できることも少なくないですので、早めに弁護士に相談して頂くことが重要です。

当法律事務所では、自ら数多くの後遺障害診断書を含めた診断書の作成も行っていた整形外科医でもある代表弁護士と大阪弁護士会交通事故委員会所属の交通事故事案経験豊富な女性弁護士の2名体制で、後遺障害等級認定の現状を踏まえ、診断書に記載すべき内容、表現方法をアドバイスいたします。

1.積極損害

治療関係費

治療費及び入院費は、必要かつ相当な実費について認められます。

入院中の個室使用料は、医師の指示があった場合、重症である場合等、特別な事情がある場合に限り認められます。

整骨院における施術費等は、医師の指示があった場合又は症状により有効かつ相当な場合に、相当額が認められます。

入院雑費

入院雑費は、1日あたり1500円(平成17年1月1日以降の事故)を基準として、入院期間に応じて認められます。

交通費

入退院・通院の交通費は、実費相当額が認められます。

タクシーについては、傷害の内容・程度等から相当性があるときに限り認められます。

自家用車利用による交通費は、ガソリン代(1kmあたり15円程度)のほか、必要に応じ高速道路料金、駐車場代も認められます。

付添看護費

入院又は通院の付添看護費は、医師の指示があった場合又は症状の内容・程度、被害者の年齢等から必要性が認められる場合に、損害として認められます。

職業付添人の場合は、必要かつ相当な実費が認められ、近親者による付添の場合は、入院付添で1日あたり6000円(平成14年1月1日以降の事故)を基準として認められます。

将来の介護費

原則として、平均余命までの間、必要かつ相当な範囲で認められます。

装具・器具購入費用等

車椅子、義足等の装具・器具の購入費は、症状の内容・程度に応じて必要かつ相当な範囲で認められます。一定期間で交換が必要なものについては、将来の費用も認められます。

家屋改造費等

家屋改造費、自動車改造費等は、症状の内容・程度に応じて、必要かつ相当な範囲で認められます。

葬儀関係費

死亡の事実があれば、特段の立証を必要とせず、150万円(平成14年1月1日以降の事故)が認めらますが、特段の事情がなければ、実際にかかった金額がこれを超えても、基準額を超える認定がなされることは少ないです。

2.消極損害

休業損害

基礎収入×休業期間
基礎収入
給与所得者 事故直前3か月の平均収入を用いるのが原則
事業所得者 事故直前の申告所得額を用いるのが原則
家事従事者 学歴計・女性全年齢平均賃金を基礎とするのが原則

後遺障害による逸失利益

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

基礎収入:休業損害と同じです。

労働能力喪失率:労働能力の低下する程度を指し、後遺障害等級ごとに以下の基準を参考に決められます。

第1級 100%
第2級 100%
第3級 100%
第4級 92%
第5級 79%
第6級 67%
第7級 56%
第8級 45%
第9級 35%
第10級 27%
第11級 20%
第12級 14%
第13級 9%
第14級 5%

労働能力喪失期間:原則として症状固定から67歳までの期間です。

ライプニッツ係数は、将来取得する予定の金額を一括で受け取ることに対する中間利息を控除するための係数です。

死亡による逸失利益

基礎収入から交通事故被害者本人の生活費として一定割合(一家の支柱及び女性は30~40%、その他は50%)を控除し、これに就労可能年数に応じたライプニッツ係数を掛けて算出します。

3.慰謝料

死亡慰謝料

死亡慰謝料は、死亡された交通事故被害者が一家の支柱の場合2800万円、その他の場合2000~2500万円(平成14年1月1日以降の事故)が基準となります。

入通院慰謝料

入通院慰謝料については、入通院期間を基礎として算定される慰謝料です。

実務では、赤い本(「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部)や緑の本(「交通事故損害賠償額算定のしおり」大阪弁護士会交通事故委員会」)等の基準が参考にされます。

以下、赤い本より抜粋

  1. 傷害慰謝料については、原則として入通院期間を基礎として別表1を使用する。
    通院が長期にわたり、かつ不規則である場合は実日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることがある。
    被害者が幼児を持つ母親であったり、仕事等の都合など被害者側の事情により特に入院期間を短縮したと認められる場合には、上記金額を増額することがある。なお、入院待機中の期間及びギブス固定中等安静を要する自宅療養期間は、入院期間とみることがある。
  2. 傷害の部位、程度によっては、別表1の金額を20%~30%程度増額する。
  3. 生死が危ぶまれる状態が継続したとき、麻酔なしでの手術等極度の苦痛を被ったとき、手術を繰り返したときなどは、入通院期間の長短にかかわらず別途増額を考慮する。
  4. むち打ち症で他覚症状がない場合は別表2を使用する。この場合、慰謝料算定のための通院期間は、その期間を限度として、実治療日数の3倍程度を目安とする。
【別表1】(原則)
  入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院   53 101 145 184 217 244 266 284 297 306 314 321 328 334 340
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318 325 332 336 342
2月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315 322 329 334 338 344
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319 326 331 336 340 346
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323 328 333 338 342 348
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325 330 335 340 344 350
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327 332 337 342 346  
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329 334 339 344    
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331 336 341      
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333 338        
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335          
11月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332            
12月 154 183 211 236 260 280 298 314 326              
13月 158 187 213 238 262 282 300 316                
14月 162 189 215 240 264 284 302                  
15月 164 191 217 242 266 286                    
【別表2】(むち打ち症で他覚症状がない場合)
  入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院   35 66 92 116 135 152 165 176 186 195 204 211 218 223 228
1月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199 206 212 219 224 229
2月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201 207 213 220 225 230
3月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202 208 214 221 226 231
4月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203 209 215 222 227 232
5月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204 210 216 223 228 233
6月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205 211 217 224 229  
7月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206 212 218 225    
8月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207 213 219      
9月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208 214        
10月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209          
11月 117 135 150 160 171 179 187 193 199 204            
12月 119 136 151 161 172 180 188 194 200              
13月 120 137 152 162 173 181 189 195                
14月 121 138 153 163 174 182 190                  
15月 122 139 154 164 175 183                    

後遺障害慰謝料

交通事故被害者に後遺障害が残存した場合に、後遺障害の等級に応じ、赤い本等を基準として支払われます。

赤い本の基準は以下のとおりですが、事案により、増減されます。

第1級 2,800万円
第2級 2,370万円
第3級 1,990万円
第4級 1,670万円
第5級 1,400万円
第6級 1,180万円
第7級 1,000万円
第8級 830万円
第9級 690万円
第10級 550万円
第11級 420万円
第12級 290万円
第13級 180万円
第14級 110万円

4.物的損害

車両修理費等

車両が修理不能であるか、又は修理費が事故時の時価額を上回る場合は、原則として全損と評価し、事故時の時価額が損害額となります。

他方、修理可能であって、修理費が事故前の時価相当額を下回る場合は、必要かつ相当な範囲の修理費が損害となります。

評価損(いわゆる格落ち)

修理してもなお機能に欠陥を生じ、あるいは事故歴により商品価値の下落が認められる場合に、その減少分を損害として認められることがありますが、争いとなることが多いです。

代車使用料

交通事故により車両の修理等のために代車を使用する必要性があり、レンタカーを使用するなど実際に代車を使用した場合は、相当な範囲で認められます。 

休車損害

営業用車両については、車両の修理等のために使用することができなかった場合に、営業を継続していれば得られたであろう利益が損害として認められます。

5.その他

弁護士費用

裁判となった場合は、認容された賠償額の10%程度が認められることが多いです。

遅延損害金

損害賠償債務は、損害の発生と同時に当然に遅滞に陥るとされていますので、原則として事故日から年5%の割合の遅延損害金を請求することができます。

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