交通事故の消滅時効について(民法上の損害賠償請求権編)

交通事故の被害にあったとき、被害者は相手方に対して民事上の損害賠償請求権を有します(責任の根拠規定として、民法709条、自賠法3条など)。

この民事上の損害賠償請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅します(民法724条前段)。なお、民事上の請求権といっても、それが債務不履行を原因とするもの(例えば、職務従事中に同僚の運転する自動車にはねられた場合などで使用者に雇用契約上の安全配慮義務違反が肯定できる事案)であれば、時効は10年ですが(民法167条)、例外的な場合といえるでしょう。

 

時効の起算点は、後遺障害の残らなかった場合は交通事故日の翌日から、後遺障害が残った場合は症状固定日の翌日から、死亡した場合は死亡日の翌日からと考えるのが多数説です。

ただし、症状固定日がいつであるのか争いになることもあります。医師の作成した後遺障害診断書の症状固定日の記載だけが全てではなく、受傷後の治療状況や改善状況の有無などが考慮されることもあります。

 

時効を止める手段として「中断」という制度があります。時効の中断があれば、それまで経過した時効期間が白紙に戻り、中断があった時から改めて時効期間のカウントが始まるというものです。中断事由として民法が定めるものは、①請求、②差押え・仮差押え・仮処分、③承認です(民法147条)。また、催告を行った場合、6か月以内に裁判上の請求等を行えば、催告の時に時効の中断効が認められます(民法153条)。

もっとも、口頭で相手方に請求しただけでは中断の効果は認められないなど留意点がありますので、自己判断は危険です。

 

その他、除斥期間にも注意が必要です。これは、不法行為の時から20年が経過したときは除斥期間により民事上の損害賠償請求権が行使できなくなるというものです(民法724条後段)。除斥期間は時効と異なり、中断がありません。

 

このように、時効期間が経過してしまったような場合には被害者が受け取れるはずであった賠償金を受け取ることが出来なくなる恐れもありますので、治療が長引いている場合などは早い段階で交通事故に詳しい弁護士などの専門家に相談することが大切です。