交通事故で、事業所得者の固定経費が休業損害として認定される場合

交通事故により受傷して休業した場合、症状固定日までの休業損害が賠償されます。

交通事故被害者の休業損害の算定にあたっては、基礎収入の認定が重要になりますが、事業所得者の基礎収入算定にあたっては、固定経費の問題があります。

 まず、固定経費と流動経費の区別について説明します。

明確な定義はありませんが、流動経費は営業活動を行うことによって変動するものを意味するものと考えて下さい。例えば、材料の仕入代金や、消耗品代などです。

これに対して、固定経費とは、営業活動を行わない間にも支払わなければならないものを意味します。例えば、事業所の家賃などは将来営業活動を再開するときに備えて必要な支出であり、固定経費とされます。

裁判例においては、交通事故被害者が休業中に固定経費を支払った場合には、損害賠償の対象としています。

固定経費として認められやすい費目としては、事業所の地代家賃、損害保険料、公租公課、減価償却費などです。

但し、上記固定経費の賠償は、完全休業した場合を想定しています。

交通事故により売上は減少したものの完全休業に至っていない場合、現に行えている営業活動のために固定経費が使われているということになりますから、売上減少額と固定経費をどちらも損害と認めてしまうと、固定経費を二重に評価していることになります。そのため、裁判例では、交通事故後の売上減少額のみを休業損害と認めればよい、と考えるものがあります(東京地判平成24年7月18日など)。

詳細は、交通事故に詳しい弁護士にご相談ください。