損害論⑩・後遺障害逸失利益(労働能力喪失期間)

交通事故の被害に遭い、交通事故に基づく損害を加害者ないし保険会社に請求する場合、具体的な損害額がいくらであるかということが争いになります。今回は、その中でも後遺障害逸失利益(労働能力喪失期間)について解説致します。

 

1 後遺障害逸失利益とは

逸失利益とは、不法行為がなければ被害者が得たであろう経済的利益を失ったことによる損害をいいます。後遺障害による逸失利益の損害額、【収入額(年収)】×【労働能力喪失率】×【中間利息控除係数】で計算します。

 

2 労働能力喪失期間

労働能力喪失期間の始期と終期は、原則として、以下のようになります。まず、労働能力喪失期間の始期は症状固定日です。次に、労働能力喪失期間の終期は、67歳が一つの目安となりますが、症状固定の年から67歳までの年数と症状固定の年からの平均余命を2分の1した年数を比べて、前者が後者よりも少ない場合には、症状固定の年からの平均余命を2分の1した年数を労働能力喪失期間とします。

しかし、むちうち損傷については、自覚症状を主体とし、一般的には医学的に症状固定後も回復傾向を示すことが多いため、後遺障害12級については5年ないし10年、14級については5年以下の労働能力喪失期間とされる場合が多いです。

もっとも、むちうち損傷の場合でも、長期の喪失期間を認めた裁判例もあります。

 

3 判例

 横浜地裁平成24年2月2日判決は、症状固定時50歳、むち打ち損傷の女性の事案につき、「原告には、前記のとおり右上下肢の痛みが残存し、後遺障害併合14級9号に該当すると認定されたこと、原告の職業は中華飯店の配膳人であるから、右上下肢の痛み等の神経症状は長時間の立ち仕事や配膳に差し支えるところが小さくないこと、原告は、症状固定後も2回職場への復帰を試みたが身体が続かずに短期間で辞めさせられたこと、本件事故から4年近く経過した現在でも復職できていないことなどの事情を考慮すれば、原告の労働能力喪失率は5%、労働能力喪失期間は就労可能年齢である67歳までの17年間(症状固定時50歳)とするのが相当である。」と判示し、症状固定後の症状、就労状況等を加味して、労働能力を17年間と判断しました。

 

4 最後に

 交通事故における損害額の計算は、一般の方には判断が難しいものと思います。当事務所にご依頼いただければ、妥当な損害額を判断し、加害者及び保険会社に対し適正な額を主張致します。

大阪A&M法律事務所では交通事故の被害者の方の相談をお待ちしております。