損害論⑧・後遺障害逸失利益(給与所得者)

交通事故の被害に遭い、交通事故に基づく損害を加害者ないし保険会社に請求する場合、具体的な損害額がいくらであるかということが争いになります。今回は、その中でも後遺障害逸失利益(給与所得者)について解説致します。

1 後遺障害逸失利益とは

逸失利益とは、不法行為がなければ被害者が得たであろう経済的利益を失ったことによる損害をいいます。後遺障害による逸失利益の損害額は、【収入額(年収)】×【労働能力喪失率】×【中間利息控除係数】で計算します。

 

2 給与所得者の収入額

 上記の後遺障害逸失利益の収入額のうち、給与所得者については、事故前の給与額を基礎とします。給与額には、本給のほか、歩合給、各種手当、賞与を含みます。

 

3 給与所得者の退職金

 給与所得者については、将来の給与所得とは別に、退職金が考慮されます。すなわち、退職金が支給されることが確実な企業に勤務していた交通事故の被害者が、後遺障害のために退職を余儀なくされた場合には、退職時に会社などから支給された退職金額と、定年まで勤務すれば得られたであろう退職金額との差額が、逸失利益として認められます。もっとも、定年時に支払われる金額は中間利息(将来の運用利益)を控除した金額です。

 

4 判例

 大阪地裁平成17年3月25日判決では、「原告が、本件事故により退職することなく、定年(65歳)まで勤務した場合の退職金は、1696万8000円であり、症状固定時(45歳時)の現価を求めるために20年に対応するライプニッツ係数0.3768を乗じ、現実に支給された退職金312万7000円を控除した額は、326万8060円となる。」と判示し、退職時に支給された退職金額と、定年まで勤務すれば得られたであろう退職金額との差額を逸失利益として認めた。

 

5 最後に

 交通事故における損害額の計算は、一般の方には判断が難しいものと思います。当事務所にご依頼いただければ、妥当な損害額を判断し、加害者及び保険会社に対し適正な額を主張致します。

大阪A&M法律事務所では交通事故の被害者の方の相談をお待ちしております。