損害論⑦・休業損害(無職者)

交通事故の被害に遭い、交通事故に基づく損害を加害者ないし保険会社に請求する場合、具体的な損害額がいくらであるかということが争いになります。今回は、その中でも休業損害(無職者)について解説致します。

 

 1 休業損害とは

休業損害とは、交通事故による受傷の治療経過中、受傷及びその治療のため被害者が休業し、あるいは十分な稼働ができなかったために、症状固定時までに生じた得べかりし利益をいいます。休業損害の損害額は、【収入日額】×【休業日数】で計算します。

 

 2 無職者の休業損害

 失業中の方は収入がありませんから、失業状態が継続する限りは、休業による損害が生じないことになります。そして、身体状況が改善され就労可能になるまでの期間が比較的短期間の場合には、具体的な就労の予定が明らかにされないかぎり、休業損害は認められません。

 

3 判例

 東京地裁平成6年7月22日判決は、「原告は昭和43年6月28日生まれの事故当時24歳の女子であって、短大卒業後不動産会社に会社員として勤務した後平成4年12月をもつて退職し、同月人材派遣会社に派遣社員として登録して、一般事務職員として派遣先企業が決定するまで自宅で待機中に本件事故に遭遇したところ、派遣先企業で常勤扱いとなれば固定給として毎月14万5000円の支給が約束されていたこと、原告は、治療のため病院と接骨院に通院することとなり、派遣先企業での連日勤務がかなわなくなって、事故の翌日から接骨院の通院が終了するまでの173日間具体的な派遣先企業が決まらなかったことが認められる。もっとも、本件事故の態様、原告の傷害の部位程度等の諸事情に鑑みれば、右通院期間のうち、後半の67日の間派遣先企業が決まらなかったことと本件事故との間には相当因果関係はないというべきである。したがつて、原告は、本件事故によって、106日間にわたって派遣先企業が決まらず、その間、一月当たり14万5000円の固定給に相当する一日当たり4833円程度、合計51万2298円の損害を被ったものと推認することができる。」と判示し、交通事故当時、無職者であったものの、通院期間の前半部分の106日間については、就労していた蓋然性が高いと判断し、休業損害を認めました。

 

4 最後に

 交通事故における損害額の計算は、一般の方には判断が難しいものと思います。当事務所にご依頼いただければ、妥当な損害額を判断し、加害者及び保険会社に対し適正な額を主張致します。

大阪A&M法律事務所では交通事故の被害者の方の相談をお待ちしております。