損害論⑥・休業損害(会社役員)

交通事故の被害に遭い、交通事故に基づく損害を加害者ないし保険会社に請求する場合、具体的な損害額がいくらであるかということが争いになります。今回は、その中でも休業損害(会社役員)について解説致します。

 

1 休業損害とは

休業損害とは、交通事故による受傷の治療経過中、受傷及びその治療のため被害者が休業し、あるいは十分な稼働ができなかったために、症状固定時までに生じた得るべかりし利益をいいます。休業損害の損害額は、【収入日額】×【休業日数】で計算します。

 

2 会社役員の収入日額

 休業損害の収入日額は、被害者の立場によって様々ですが、被害者が会社役員であった場合の収入日額について説明します。会社役員の収入日額は、取締役報酬額をそのまま収入にするのではなく、取締役報酬中の労務対価部分を認定し、その金額を基礎として損害算定します。そして、その労務対価部分の認定は会社の規模、利益状況、当該役員の地位・職務内容、年齢、役員報酬の額、他の役員・従業員の職務内容と報酬・給料の額などを考慮して判断します。

 

3 判例

仙台地裁平成21年6月26日判決では、従業員が23ないし24名程度の小規模会社の専務取締役を務めていた被害者が、会社から受け取っていた給与所得の額が、会社の営業成績に応じて、役員報酬に見合う分が大きく増減していたという事案につき、「このような収入金額の推移を踏まえると,この給与所得には,労働の対価の部分だけではなく,利益配当などの実質をもつ部分も含まれているとみるのが相当である。したがって,休業損害を算出するに当たっての収入の額は,この給与所得から,利益配当などの実質をもつ部分を控除した額とするのが相当である」と判示し、当該役員の給与所得のうち労務対価部分を収入日額としました。

 

4 最後に

 交通事故における損害額の計算は、一般の方には判断が難しいものと思います。当事務所にご依頼いただければ、妥当な損害額を判断し、加害者及び保険会社に対し適正な額を主張致します。

大阪A&M法律事務所では交通事故の被害者の方の相談をお待ちしております。