損害論④・家屋改造費

交通事故の被害に遭い、交通事故に基づく損害を加害者ないし保険会社に請求する場合、具体的な損害額がいくらであるかということが争いになります。今回は、その中でも家屋改造費について解説致します。

 

1 家屋改造費の基準

交通事故により重度の後遺障害が残った被害者が、日常生活上で生ずる困難をできるかぎり回避するために、自宅建物を改造し、また、移動に便利なように装置を設置する必要が生じる場合があります。このような場合には、改造等の必要性、支出額の相当性を加味して、改造にかかった実費相当額が交通事故による損害として認められます

 

2 改造工事による家族の便益

 被害者以外の家族が家屋の改造により事実上享受する便益を損害算定上でどう取り扱うかが問題となることがあります。例えば、エレベーターの設置などがある場合には、現実に家族が利用する以上、損益相殺として家屋改造費を減額する必要があります。もっとも、家屋を改造すれば、新しい材料を使うことにより何らかの利便が生ずるのであるから、不本意にも被害者が支出した費用の負担を被害者に押し付けるべきではなく、無視できないほどの利便を認めざる得ない場合に、損益相殺として家屋改造費を減額する、とするのが裁判例です。

 

3 判例

さいたま地裁平成22年9月27日判決では、自宅を改造して被害者を自宅介護するために、既存家屋にリビング、寝室、浴室、玄関、ホールを増築、既存家屋の一部をダイニングに改築して増築部分と連絡するという改造がなされ、その見積額が2353万円余であった事案につき、「増築自体の必要性は認められるが、家族が得られる利便性を控除すべきことを考慮すると、本件事故と相当因果関係のある自宅改造費としては、1000万円をもって相当と認める。」と判示し、改造工事による家族の便益を考慮して、全体の改造費の約43%を家屋改造費として認めました。

 

4 最後に

 交通事故における損害額の計算は、一般の方には判断が難しいものと思います。当事務所にご依頼いただければ、妥当な損害額を判断し、加害者及び保険会社に対し適正な額を主張致します。

大阪A&M法律事務所では交通事故の被害者の方の相談をお待ちしております。