交通事故における損害・後遺障害逸失利益

1 後遺障害逸失利益

逸失利益とは、不法行為がなければ被害者が得たであろう経済的利益を失ったことによる損害をいいます。逸失利益には、死亡によるものと後遺障害によるものがありますが、今回は、後遺障害による逸失利益を説明致します。後遺障害による逸失利益の損害額は、【収入額(年収)】×【労働能力喪失率】×【中間利息控除係数】で計算します。

2 労働能力喪失率

 労働能力喪失率とは、後遺障害が残存したことによる労働能力の喪失を割合で表したものです。この労働能力喪失率は、労災実務のための通達により、基本的な値が定められています。例えば、後遺障害の程度として最も軽い第14級の場合には労働能力喪失率は5%であり、一方で後遺障害の程度として最も重い1級の場合には、労働能力喪失率が100%となっています。もっとも、この値は絶対的なものではなく、被害者の職業、年齢、性別、後遺障害の部位、程度、事後前後の稼働状況など具体的な事情が考慮されます。

 3 中間利息控除係数

 逸失利益は、症状固定後に順次現実的な実損が生じるという性質を有している一方で、賠償においては、通常、将来取得するはずだった利益の補償を現時点で一括して支払いを受けることになります。そのため、逸失利益の損害計算にあたっては、将来の運用利益を控除すべきとされています(現行の民法では年利5%)。これを中間利息控除といいます。中間利息控除は複雑な計算を要しますが、労働能力喪失期間を計算し、その期間に相当する中間利息控除係数を係数表から読み取ることになります。

 労働能力喪失期間の始期と終期は以下のようになります。まず、労働能力喪失期間の始期は症状固定日です。次に、労働能力喪失期間の終期は、67歳が一つの目安となりますが、症状固定の年から67歳までの年数と症状固定の年からの平均余命を2分の1した年数を比べて、前者が後者よりも少ない場合には、症状固定の年からの平均余命を2分の1した年数を労働能力喪失期間とします。

なお、症状固定となった年の平均余命にもよりますが、概ね男性が53歳、女性が47歳以上であれば、67歳までの年数が平均余命の2分の1した年数よりも少なくなります。

 4 具体例

 例えば、平成22年5月3日、Aさん(年収500万円、事故当時35歳)が交通事故に遭い、平成24年5月3日に症状固定となり、後遺障害等級8級が認定されたとします。(労働能力喪失率は個別の事情を見ることなく、通達の値によることとします。)

この場合の後遺障害逸失利益の計算は、まず、労働能力喪失期間を計算すると、始期は症状固定時である37歳であり、ここから67歳までの年数は30年になります。一方、平均余命(平成24年の男性37歳の平均余命は約44年)を2分の1した年数は22年ですので、労働能力喪失期間は67歳までの30年とします。

そうしますと、後遺障害逸失利益の損害額は、500万円×0.45(8級の労働能力喪失率は45%)×15.37245103(30年の中間利息控除係数)=3458万8015円となります。

 5 最後に

 具体例にあるとおり、後遺障害逸失利益の計算は、一般の方には、判断することが難しいかもしれません。当事務所にご依頼いただければ、妥当な損害額を判断し、相手方任意保険会社に適正な示談額を提示致します。

大阪A&M法律事務所では交通事故の被害者の方の相談をお待ちしております。