交通死亡事故の逸失利益とは

交通事故により不幸にも被害者がお亡くなりになった場合、その被害者の方の相続人が加害者に対してその損害を請求することとなります。

慰謝料についてはこちらですが、今回は「逸失利益」について解説します。

逸失利益とは

交通事故において逸失利益とは、被害者から加害者側に請求することができる損害賠償金の項目のひとつで、交通事故にあわなければ得られたはずの将来の収入についての金銭的な補償です。

交通事故で被害者が亡くなったり後遺障害を負ってしまったりした場合、死亡の場合には当然ながら交通事故後の就労収入は全くなくなりますし、後遺障害の場合にはその程度や態様と職業によっては、交通事故後全く就労ができなくなったり、できる仕事内容に制限が発生することとなります。

そのため、交通事故によって、交通事故がなければ被害者が得られるはずだった収入は損害ということになります。この損害を逸失利益といいます。

逸失利益には、死亡逸失利益と後遺障害逸失利益の2種類があります。

死亡事故の逸失利益の算定方法

死亡した場合の逸失利益

死亡による逸失利益の算定式は、下記のとおりとなります。

算定式:年収×(1-生活控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

たとえば、50歳男性(年収300万円、一人暮らし)の死亡逸失利益は、

300万円×(1-0.5)×11.274=1691万1000円

となります。

年金を受給していた場合の逸失利益

また、年金を受給していた場合、下記算定式で逸失利益を算定します。

算定式:年金額×(1-生活控除率)×平均余命までの年数に対応するライプニッツ係数

 なお、遺族年金など受給者に保険料の負担がない性質のものは認められません。

ただし、被害者が、退職年金より遺族年金の方が高額であったことを理由に、遺族年金を受給し、退職年金を受給していなかった場合において、退職年金から受給できた金額は死亡による逸失利益の対象となるとした判例もあります(名古屋地判平成22年5月21日)。

他方、年金受給前に死亡した場合については判例が分かれているところではあります。

逸失利益と休業損害の違い

逸失利益と似た概念として「休業損害」があります。休業損害も逸失利益も、交通事故による収入の減少についての損害賠償という意味では同じですが、違いとして、休業損害は現在生じている収入の減少の補填を求めるものであることに対し、逸失利益は将来発生するはずの収入の減少の補填を求めるという点があります。

具体的には、休業損害は、交通事故から症状固定(交通事故による傷害がこれ以上治療によってもよくも悪くもならない状態であると主治医から診断されること)までの期間中に、交通事故の傷害の治療や療養のために仕事を休んだり、働いたとしても十分には稼働できなかったりしたために発生した現実の収入減についての補償となります。

逸失利益は、上記の症状固定をしたあとに、身体に残ってしまった後遺障害により被害者の労働能力が失われたり減退させられたりしたことについての補償となります。

 相続放棄との兼ね合い

被害者の相続人が相続放棄をしている場合は、逸失利益を含む被害者ご本人の損害賠償請求はできませんが、遺族固有の慰謝料は請求することができます。

このほかにも、たとえば夫の給料で生活していた妻が交通事故により夫を失い、相続放棄をした場合については、妻は加害者に対して、扶養利益喪失による損害賠償の請求はできます。

また、加害者が死亡した場合は、民事上の責任について、被害者は加害者の相続人や保険会社に対して直接請求をすることができます。