交通事故後の頚部症状の他覚的所見として既往の椎間板ヘルニアを認めた例(京都地方裁判所平成26年7月11日)

交通事故と頚椎椎間板ヘルニア

 

交通事故、特に追突事故で、首に障害を負い、頚部痛、上肢痛、上肢のしびれ等の症状が出現することはしばしばあり、一般にむちうち損傷などといわれます。むちうち損傷の多くは、頸椎捻挫という診断名がつきますが、一部、MRIにて、椎間板ヘルニアを指摘されることがあります。頚椎の椎間板ヘルニアが交通事故で発症したのかという因果関係が、交通事故の事案ではしばしば問題となります。本裁判例(京都地方裁判所平成26年7月11日)は、椎間板ヘルニアの発症自体は、加齢に伴うものであり交通事故との直接の因果関係を否定するものの、交通事故後に症状が出現したということで、椎間板ヘルニアを認める画像所見を、本件の症状の他覚所見として認め、後遺障害等級12級を認定したというもので、参考になります。

 

交通事故後の頚部症状の他覚的所見として既往の椎間板ヘルニアを認めた例(京都地方裁判所平成26年7月11日)

 

追突事故の被害者(41歳男性)について、頸椎捻挫に伴う神経症状が、経年性のヘルニアに起因するものであることは明らかである。そして、原告は本件事故当時41歳と未だ若く、ヘルニア像に明らかな外傷性所見はないのに、ヘルニアは複数の椎間板に及び、かつ脊髄硬膜脳への圧排や骨棘が生じていることにかんがみれば、本件交通事故前から原告には、加齢に伴う一般的な経年変性を超える程度のヘルニアの既往があったものとうかがわれ、このヘルニアの存在が本件交通事故による治療期間の長さや後遺障害の程度に相当程度影響していることを否定できないとした上で、頚椎椎間板ヘルニアの既往について、30%の素因減額をしています。

後遺障害(後遺症)については、本件事故後に原告に残存した頚椎捻挫に伴う神経症状は、他覚的所見に裏付けられたものであり、「局部に頑固な神経症状を残すもの」として、12級に該当するというべきであると後遺障害等級12級を認定しています。

 

まとめ

 

交通事故後、MRIにより頚椎の椎間板ヘルニアを診断されたにもかかわらず、交通事故加害者の保険会社から、因果関係を争われることは少なくありません。交通事故に関する裁判例や医学的な知識が、相手方との交渉や裁判において重要となりますので、交通事故に詳しい弁護士にご相談されることをおすすめします。