後遺障害等級認定非該当の肩腱板断裂について5%の労働能力喪失を認定した裁判例(神戸地方裁判所判決平成26年7月18日)

交通事故と肩の腱板断裂

 

交通事故により、肩の腱板断裂(腱板損傷)を受傷されたというご相談を受けることはよくあります。肩の腱板とは、肩甲骨と上腕骨をつなぐ筋肉で、肩関節の回旋に作用する筋肉であるが、挙上運動を補助したり、関節の安定性にも寄与したりしています。

この腱板に裂け目が生じたり、腱板が切れたりした状態が腱板断裂なのですが、外傷で発症することもありますが、多くは、加齢に伴う変性により生じます。交通事故により腱板断裂を受傷した中高年の方の場合は、医学的には、加齢に伴い変性が生じていた腱板が、外傷を契機に断裂したというケースが多いです。そういったケースでは、交通事故加害者側の保険会社から、腱板損傷が交通事故の前からあったのではないかと因果関係を争われたり、もともとの状態が悪かったのだからと一定割合の減額(素因減額)を求められたりすることもあります。

 

後遺障害等級認定非該当の肩腱板断裂について5%の労働能力喪失を認定した裁判例(神戸地方裁判所判決平成26年7月18日)

 

本裁判例(神戸地方裁判所判決平成26年7月18日)は、自動二輪車運転中に交通事故に遭われた46歳男性の肩腱板断裂について、自賠責保険の後遺障害等級認定では非該当であったが、「原告の右肩については、後遺障害の等級認定基準には至らないものの、軽度の可動域制限が残存しており、その回復の見込みはないとされていること、原告は、本件事故前に比べ、重い物が持てなくなり、パソコン操作や運転操作をするに当たって右肩が以上にこるなどして、仕事に支障が出ていることなどが認められ、これらの事情にてらすと、原告の労働能力喪失率は5%、労働能力喪失期間は症状固定の47歳から67歳までと認める」としました。

 

まとめ

 

交通事故により腱板断裂を受傷し、可動域制限が残存した場合に、自賠責保険の後遺障害等級認定の基準は、患側の可動域が健側の3/4以下に制限されていれば12級が認定されるというものであるが、逆に、3/4をやや上回る程度に障害されている場合に、認定を受けることができません。本裁判例では、交通事故被害者が、腱板断裂により、現実に業務に支障が出ていることなどを根拠に、実態に即して、5%の労働能力喪失を認定したというもので、後遺障害等級認定で非該当となっている方には参考になると考えます。

後遺障害等級認定や異議申立につきましては、交通事故に詳しい弁護士にご相談頂ければと存じます。