交通事故による足の骨折後に対し後遺傷害等級14級9号を認定された美容師について10年5%の逸失利益を認定した裁判例(神戸地方裁判所平成26年5月23日)

交通事故被害者の逸失利益と労働能力喪失期間

 

交通事故によりお怪我をされ、治療を受けたにも関わらず後遺症(後遺障害)が残存した場合には、後遺障害等級認定により認定された等級に応じた労働能力喪失率に応じ(14級は5%)、逸失利益が認められるのが通常です。そして労働能力喪失期間は、67歳までとされ、年長者は、67歳までと平均余命の2分の1の長い方とされます。もっとも、交通事故被害者の後遺障害が、頸椎捻挫(むちうち損傷)による神経障害の場合には、裁判例においても、認定された等級が14級9号の場合は3から5年程度に限定され認定される傾向にあります。本裁判例(神戸地方裁判所平成26年5月23日)では、交通事故被害の職業や症状の程度などを具体的に検討し、労働能力喪失期間を、一般的な裁判例より長い10年を認定しています。

 

交通事故による足の骨折後に対し後遺傷害等級14級9号を認定された美容師について10年5%の逸失利益を認定した裁判例(神戸地方裁判所平成26年5月23日)

 

本裁判例(神戸地方裁判所平成26年5月23日)は、交通事故により足関節内果骨折を受傷した37歳女性美容師の労働能力喪失期間について、被告から、「このような神経症状は2~3年程度で消え玄することが期待でき、・・・最長でも5年を超えない期間・・・を認めれば足りる。」と主張したのに対し、「原告の後遺傷害は、14級9号に相当するものであるが、右足首の疼痛に加えて軽度の可動域制限もあること、原告は、症状固定後も2人の子を監護養育しながら、美容師として立ち仕事に従事していること、症状固定から約4年となる現時点においても、右足首の疼痛は相当程度のものが残存しており、走ることも困難であったり、仕事についても、足に体重をかける施術は代理のスタッフに代わってもらっていること、重い物が持てなくなり、家事や育児にも支障があることなどが認められ、これらの事情に、原告の年齢などをも総合考慮すると、原告の労働能力喪失率は5%、労働能力喪失期間は10年間と認める」としました。

 

まとめ

 

交通事故による被害者の方に、後遺症(後遺障害)が残存した場合には、逸失利益が認められ、労働能力喪失期間は、67歳までとされ、年長者は、67歳までと平均余命の2分の1の長い方とされるのが原則ですが、後遺障害の内容や程度に応じ、交通事故加害者側の保険会社や裁判例において、労働能力喪失期間を短めに認定されることも少なくありません。労働能力喪失期間の問題の対応つきましては、裁判例などの交通事故実務のみならず、医学的な知識も重要となります。交通事故に詳しい弁護士にご相談されることをおすすめします。