高次脳機能障害の後遺障害等級認定のポイント

(デザイン)高次脳機能障害を詳しく解説

以下、交通事故により脳損傷を負い、高次脳機能障害が出現していると後遺障害等級認定で認定されるためのポイントを詳述していきます。

交通事故を原因とした高次脳機能障害

症状などの特徴

交通事故などの外傷を原因として高次脳機能障害が生じた場合の典型的な症状としては、認知障害、行動障害、人格の変化があります。交通事故などによる脳外傷を原因として高次脳機能障害が生じた場合は、受傷直後の症状が重くとも、徐々に軽減していくことが通常です。

 

認知障害とは:新しいことが覚えられない、計画的な行動ができない、注意が散漫であるといったような、記憶・記銘力の障害、注意・集中力の障害、遂行機能の障害などをいいます。

行動障害とは:周囲の状況に応じ適切な行動をとることができない、複数のことを同時にできない、危険を予測して回避する行動をとることができない、といった状態をいいます。

人格の変化とは:交通事故による外傷の前と比較して、自発性が低下している、気力がなくなっている、怒りやすくなった、自己中心的になったなどといった状態をいいます。

 

これらの症状が残存すると、通常の社会生活を送ることに支障がでることも少なくありません。具体的には、仕事や学業を円滑に行うことができなくなるでしょうし、同僚や友人などとの関係をうまく行うこともできず、自身の生活をコントロールすることも難しくなることもあります。場合によっては、介護が必要となりますし、重症になると、危険行動などから常に誰かが介護をしなければならないという状況になりますので、家族などの負担は相当なものとなります。

 

交通事故による高次脳機能障害の原因

高次脳機能障害になりやすい交通事故による外傷としては、主には、びまん性脳損傷であると言われています。もっとも、脳挫傷や頭蓋内出血などの脳損傷によっても、高次脳機能障害を発症することもあります。

交通事故などの外傷を原因として高次脳機能障害が生じた場合、典型的な症状としては、認知障害、行動障害、人格の変化があります。これらの症状が残ると、ひどい場合は、自分で食事ができない、危険行動をするなどの生命に関わる後遺障害となることもありますし、就労や就学が困難になったり、日常生活に影響が出たりする程度の後遺障害がとなることもあります。交通事故を原因とした高次脳機能障害による後遺障害(後遺症)の等級としては、その程度に応じ、以下の様に規定されています。労災においては、高次脳機能障害について12級か14級が認定されることなど、認定基準についても若干の違いがある(労災は4能力を同等に評価する傾向あり)ので注意が必要です。

1級

身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回りの動作に全面的介護を要するもの

2級

著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの

3級

自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また、声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし、記憶力や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの

5級

単純繰り返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの

7級

一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの

9級

一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業持続力などに問題があるもの

 

この点、高次脳機能障害で、後遺障害(後遺症)等級が5級になるのか、7級になるのか、9級になるのかは、予測が難しいところです。一応の目安としては、一人暮らしができていれば家事などができているということで、単純繰り返し作業以上のことはできているということで5級にはなりにくい、職場内で配置転換を要する場合には、通常、職場内に単純繰り返し作業というものはほとんどないので5級にはなりにくい、などと言われています。

高次脳機能障害による後遺障害(後遺症)の把握

 

交通事故などの外傷を原因として高次脳機能障害が生じた場合、典型的な症状としては、認知障害、行動障害、人格の変化があります。もっとも、これらは、客観的に評価することが困難ですし、周囲からは一見わかりにくいこともあり、障害の把握は、容易ではありません。他方、障害を適切に指摘できながら、後遺障害等級認定において、適切な後遺障害(後遺症)としての認定を受けることができません。

 

高次脳機能障害による後遺障害(後遺症)の把握のための医師の診断書等

 

高次脳機能障害の後遺障害(後遺症)の程度を把握する資料としては、主治医の作成する診断書等がありますが、特に、高次脳機能障害では、「神経系統の障害に関する医学的意見」と題する様式を用いて行うことが、自賠責保険上の後遺障害等級認定との関係では適切です。まずは、この用紙を入手して頂き、主治医に記載を依頼することになります。

また、高次脳機能障害は、受傷後の意識障害との影響があるといわれているため、受傷時に診療を受けた医療機関に対し、「頭部外傷後の意識障害についての所見」と題する様式の書面の提出を依頼することもあります。

 

なお、知能テストなどの神経心理学的検査も、認知障害を評価する上では、ある程度参考になりますが、行動障害および人格変化の評価を行うことはできません。

 

高次脳機能障害による後遺障害(後遺症)の把握のための家族の作成する書類

 

特に人格変化については、交通事故などによる外傷の受傷前後での変化が問題となりますので、家族など、前後の状況を把握している者からの意見も重要となります。そこで、自賠責保険上の後遺障害等級認定においては、「日常生活常用報告」と題する様式の書面を、家族が作成し提出することが必要です。この書式では、例えば、「言いたい内容を相手に十分伝えられますか」、「円滑な対人関係を保っていますか。トラブルはないですか。」といった質問に対し、受傷前後それぞれ、0~4の5段階で評価するようになっています。受傷前はすべての項目で0(問題がない)であったのに、受傷後はすべての項目で4(準備、声かけ、手助けなどを行っても、指示を守れなかったりするために、周囲の人が後始末をしなければならない場合。)というような極端な記載は、かえって信用性がないととらえられることにもなりかねませんので、適切に評価することが重要です。

 

また、4の自由記載欄には、受傷後に悪くなっている点について、エピソードを交え具体的に記載することが重要です。