上肢機能障害が後遺障害として認定される条件

肩や腕、手首などが交通事故に遭う前よりも動きにくくなった場合には、上肢機能障害(じょうしきのうしょうがい)が疑われます。

上肢機能障害とは、上肢(肩関節から先の手)が動かしにくくなった動く範囲が狭くなった全く動かなくなった等の状態をさします。
後遺障害等級の認定では、「肩」「肘」「手首」の3つの関節の可動域についての障害を上肢機能障害としています。手指の機能障害は上肢機能障害に含まれず、それぞれ第4級から第14級までの後遺障害等級に認定される可能性があります。

上肢機能障害の等級認定は細かく設定されている

上肢機能障害の後遺障害等級は、第1級から第12級に認定される余地があります。

上肢機能障害で認められる可能性のある後遺障害等級

後遺障害等級 障害の程度
第1級4号 両上肢の用を全廃したもの
第5級6号 一上肢の用を全廃したもの
第6級6号 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
第8級6号 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
第10級10号 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
第12級6号 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの

また、上肢機能障害は、その症状の程度や可動域によって判定基準が細かく設定されています。

上肢機能障害の判定基準

後遺障害等級 部位 可動域など
第1級 左右両方の上肢の3大関節すべて 関節が完全強直し全く可動しないか、それに近い(可動域10%以下)状態、かつ、手指の全部の用を廃した状態
上腕神経叢(じょうわんしんけいそう)の完全麻痺
第5級 左右どちらか一方の上肢の3大関節すべて 関節が完全強直し全く可動しないか、それに近い状態、かつ、手指の全部の用を廃した状態
上腕神経叢の完全麻痺
第6級 上肢の3大関節のうち、いずれか2つの関節 関節が完全強直し全く可動しないか、それに近い状態
関節の完全弛緩性麻痺(かんぜんちかんせいまひ)か、それに近い状態
人工関節・人工骨頭を置換した関節で可動域が1/2以下の状態
第8級 上肢の3大関節のうち、いずれか1つの関節 関節が完全強直し全く可動しないか、それに近い状態
関節の完全弛緩性麻痺(かんぜんちかんせいまひ)か、それに近い状態
人工関節・人工骨頭を置換した関節で可動域が1/2以下の状態
第10級 上肢の3大関節のうち、いずれか1つの関節 関節の可動域が1/2以下の状態
人工関節・人工骨頭を置換した関節
常に硬性装具を必要とする動揺関節(安定していない関節)
前腕の可動域が1/4以下の状態
第12級 上肢の3大関節のうち、いずれか1つの関節 関節の可動域が3/4以下の状態
ときどき硬性装具を必要とする動揺関節
習慣性脱臼(容易に脱臼していまう関節)
前腕の可動域が1/2以下の状態

可動域は健側(障害のない側の関節)との比較で評価します。上肢機能障害の後遺障害等級認定では、可動域の測定が大きなカギとなります。
しかし、可動域の測定は、どこまでの強さをかけて測るかなど、医師によっても測定結果が異なることが多々あります。

上肢機能障害が後遺障害として認定される条件

上肢機能障害が後遺障害等級に認定されるには、上肢機能障害の原因が骨折などの器質的損傷だと証明できなければいけません
器質的損傷とは、身体のどこかに実際に損傷があることを特定できるもので、骨折や脱臼、靭帯の損傷などが挙げられます。レントゲンやMRIで確認できる損傷であり、事故との因果関係がなければいけません。

症状固定時にも原因を確認できるもの

症状固定といって、これ以上の治療で回復の見込みがないと医師が判断する時点でも、その原因が特定できないといけません。
例えば交通事故で負った骨折の影響によって可動域が狭くなっている場合、その原因が骨折部位の癒合不良などだという事実を確認できることが必要です。

適切な後遺障害等級に認定されるためには、事故後なるべく早くレントゲンやMRIなどの検査を受けることをおすすめします。事故との因果関係を立証し、適切なタイミングで病状固定をするためにも、弁護士などの専門家へ一度相談するとよいでしょう。

その他の上肢の後遺症

上肢の欠損障害

上肢の欠損障害は、上肢の一部または全部を欠損してしまう障害です。欠損した部位の大きさなどにより、第1級から第5級の後遺障害等級に認定されます。

上肢の変形障害

上肢の変形障害は事故による骨折などの障害がもとで骨が変形してしまったり、偽関節(骨折が完全に治らない状態)状態になる障害です。運動障害の程度などにより第7級から第12級の後遺障害等級に認定される可能性があります。

上肢の醜状障害

上肢の醜状障害(しゅうじょうしょうがい)は、上肢の機能には問題がないが、外貌に著しい醜状が残った場合に認定の対象となる後遺障害です。
第14級もしくは第12級の後遺障害等級に認定される可能性があります。

交通事故で上肢機能障害になってしまった場合は弁護士に相談を

上肢の可動域は、日常生活の質や労働能力に直結します。また、可動域の測定結果は医師によってばらつきがあるものです。適切な検査を受け、実際の障害の程度に相応しい損害賠償金を手にするためにも、早い段階で弁護士などの専門家へ相談することをおすすめします

上肢機能障害の疑いがある方は、当事務所まで一度ご相談ください。