交通事故により発生した損害を加害者に全額請求できるのか? 過失割合が0:100になる典型的なケース

交通事故被害に遭ってしまった場合、治療費、後遺障害が残ったことに対する慰謝料、逸失利益などの人身損害と車両の修理費用や代車使用料などの物的損害が生じる可能性があります。

このように、交通事故被害に遭った場合に発生した損害は全額、加害者に対して請求することができるのでしょうか。

交通事故の発生にあたって、当事者にどの程度責任があるのかを数値で示したものを過失割合といい、最終的に加害者に対して、請求できる損害額は、損害額全体から自己の過失割合分を差し引いた金額になります。

例えば、交通事故で総額200万円の損害が生じた場合で、被害者の責任の割合が20、加害者の責任の割合が80とされるとき、被害者が加害者に対して請求できる金額は、自己の責任割合20%分である40万円を200万円から差し引いた160万円ということになります。

それでは、過失割合が、被害者:加害者=0:100となり、発生した損害額を全額請求できるのはどのような場合でしょうか。

以下では、裁判実務における過失割合の判断にあたって、広く参考とされている別冊判例タイムズ38号を基に、被害者:加害者=0:100となり、損害額を全額請求できる典型的ケースを詳しく解説していきます。

歩行者と四輪車単車との事故の場合

信号機が設置されている横断歩道上での事故

歩行者が青色信号に従って横断を開始し、赤信号で進入してきた四輪車単車と衝突した場合過失割合は、歩行者:四輪車単車=0:100となります。

青信号で横断歩道上を横断する歩行者は、赤信号を無視し進行してきた車との関係では、絶対的に保護されなければならず、原則、歩行者に安全確認義務はなく過失相殺をすることはできません。

信号機の設置されていない横断歩道上での事故

横断歩道に接近する車は、横断歩行者のいないことが明らかな場合を除き、横断歩道の直前で停止できるような速度で進行しなければならず、また、横断しようとする歩行者がいる場合には、横断歩道の前で一時停止し、歩行者の通行の妨げにならないようにしなければなりません(道路交通法38条1項)。

そのため、信号機が設置されていない横断歩道においても、横断歩行者と車との過失割合は、原則、歩行者:四輪車単車=0:100となります。

もっとも、歩行者は、車両の直前または直後で横断してはならないため(道路交通法13条1項)、車両の直前または直後を横断した場合には、歩行者にも5%~15%の過失が認められることとなります。

また、夜間の場合、車両から歩行者の発見が必ずしも容易ではないことから、歩行者に5%の過失が認められることとなります。

このように、基本的な過失割合が歩行者:四輪車単車=0:100であっても当該事故の具体的な状況によって、歩行者にも一定の過失が認められることがあります。

その他事故

上記のほか、歩道を歩いている歩行者と、車道から路外に進出または、路外から車道に進入しようとする四輪車単車との事故の場合にも、過失割合は、歩行者:四輪車単車=0:100となります。

四輪車同士(二輪車同士)の事故

交差点における直進車同士の出会い頭事故

青信号に従って、交差点に進入した車両(信号遵守車両)と赤信号にもかかわらず交差点に進入した車両(信号違反車両)が交差点で出会い頭衝突した場合過失割合は、信号遵守車両:信号違反車両=0:100となります。

もっとも、信号遵守車両であっても、前方左右に対する通常の安全確認をしていない場合や信号違反車両の発見後容易に回避措置をとることができたのに、これを怠ったような場合には、信号遵守車両に10%の過失が認められることとなります。

また、信号違反車両が交差点に明らかに先入りしているような場合にも、発見は容易となるため、信号遵守車両に10%の過失が認められることとなります。

対向車同士の事故(センターオーバー)

車両は、道路の左側部分を通行しなければならないため(道路交通法17条4項)、左側部分通行車両とセンターオーバーした対向車両とが接触した場合には、原則としてセンターオーバーした車両の一方的過失によるものと考えられ、過失割合は、左側部分通行車両:センターオーバー車両=0:100となります。

もっとも、左側部分通行車両がセンターオーバー車を発見後、進路を左に変更すれば容易に衝突を回避できたにもかかわらず、避難措置を取らなかった場合には、著しい過失を理由として、左側部分通行車両に10%の過失が認められることとなります。

追突事故

追突事故の場合、追突車両の車間距離不保持や前方不注視の一方的過失によるものと考えられ、過失割合は、被追突車両:追突車両=0:100となります。

もっとも、被追突車両が理由のない急ブレーキをかけた場合には、被追突車両に30%の過失が認められることになります。

四輪車と自転車の事故

交差点における左折四輪車と直進自転車との事故

交差点付近を直進していた自転車と交差点の30m手前で、同自転車を追い越して左折しようとした四輪車が衝突した場合過失割合は、原則、直進自転車:追越左折四輪車=0:100となります。交差点の手前30m以内では追越しが禁止されているからです(道路交通法30条3号)。

一方で、交差点の手前30mの地点で、自転車に先行している四輪車が左折の合図を出して左折を開始した場合には、自転車にも前方不注視による左折合図の見落とし等を理由として、10%の過失が認められることとなります。

交通事故の示談交渉にあたっては、弁護士に相談を!

以上では、過失割合が、被害者:加害者=0:100となる典型的なケースを解説しましたが、適切な過失割合を決定するにあたっては、事故ごとの個別事情を検討することが必要となります。

弁護士にご依頼いただいた場合、加害者加入の保険会社との交渉一切を引きうけ、当該事故の具体的な態様を踏まえ、適切な過失割合での示談交渉を行うことができます。

交通事故の被害に遭われたら、まずは、弁護士にご相談ください。