交通事故の慰謝料は、どのように算定され、どのような事情により増額するのか

交通事故の慰謝料は、どのように算定され、どのような事情により増額するのか

交通事故で人身被害にあった場合、怪我を負ったことや、後遺障害が残ってしまうことで、不安や苦痛を感じてしまうことが多々あるでしょう。このような精神的損害を賠償する目的で支払われる金銭が慰謝料です。

なお、自動車の故障など、物的損害が生じた場合の慰謝料は、原則として認められません。交通事故の人身被害にあった場合に、加害者に請求することのできる慰謝料の種類としては、①傷害慰謝料、②死亡慰謝料、③後遺障害慰謝料の3つがあります。

以下では、交通事故加害者に請求することのできる慰謝料について、詳しく解説していきます。

傷害慰謝料

傷害慰謝料とは、怪我を負ったことに対する慰謝料で、入院期間や通院期間に応じて算定されます。裁判では、以下のような表を参考に、慰謝料額の判断を行っています。

入通院慰謝料

別表Ⅰ                               (単位:万円)

入院 1月 2月 3月 4月 5月
通院 53 101 145 184 217
1月 28 77 122 162 199 228
2月 52 98 139 177 210 236
3月 73 115 154 188 218 244
4月 90 130 165 196 226 251
5月 105 141 173 204 233 257

民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻(基準編)2021(令和3年)(赤い本)

例えば、入院しておらず、通院期間が4か月の場合の慰謝料は90万円、入院期間が1か月、通院期間が5か月の場合の慰謝料は141万円というように慰謝料を判断していくこととなります。

もっとも、むち打ち症や軽い打撲、挫傷など、怪我の症状が軽度の場合には、慰謝料額は、通常の慰謝料の3分の2程度と判断されたり、別表Ⅰよりも金額の低い別表Ⅱを用いて判断をされることとなります。

一方で、重度の意識障害が相当期間継続した場合、骨折又は臓器損傷の程度が重大である場合など、社会通念上、負傷の程度が著しい場合には、別表Ⅰの慰謝料額から20%から30%増額した金額が認定されることもあります。

また、生命への危険がある状態が継続したような場合には、入通院期間の長短にかかわらず、慰謝料が増額されることもあります。

死亡慰謝料

死亡慰謝料とは、死亡したことに対する慰謝料で、死亡した被害者本人のみならず、その近親者(民法711条)も加害者に対して請求することができます。裁判では、以下の金額が目安となっています。

一家の支柱 2800万円
母親・配偶者 2500万円
その他(独身の男女、子供、幼児等) 2000万円~2500万円

(赤い本)

上記基準は、近親者分を含む死亡被害者1人あたりの慰謝料の総額とされていますが、被害者の年齢や職業、家族関係など具体的な事由により、増減されることとなります。

また、被害者の死亡によって精神的な苦痛を受けた近親者が精神疾患を発症したような場合に、当該近親者に対して、他の近親者と比べて高額な固有慰謝料を認めるような裁判例もあります。

後遺障害慰謝料

後遺障害とは、交通事故被害にあい、後遺障害が残ってしまったことに対する慰謝料で、以下の表のように後遺障害等級ごとに慰謝料額の目安が定められています。

第1級 第2級 第3級 第4級 第5級 第6級 第7級
2800万円 2370万円 1990万円 1670万円 1400万円 1180万円 1000万円
第8級 第9級 第10級 第11級 第12級 第13級 第14級
830

万円

690

万円

550

万円

420

万円

290

万円

180

万円

110

万円

基本的には、自賠責後遺障害等級認定された場合に、慰謝料算定の対象となりますが、自賠責後遺障害等級に該当しない程度の障害でも、その部位程度により、後遺障害慰謝料が認定されることがあります。

また、重度の後遺障害の場合には、被害者本人分とは別に、親族にも固有の慰謝料が認められることもあります。

慰謝料の増額事由とは

このように、交通事故の人身被害にあった場合に、加害者に請求することのできる慰謝料には、一定の基準があり、これらの基準を目安に慰謝料額が判断されることとなります。

もっとも、上記の基準は、あくまでも目安であり、近年の裁判例では、赤信号無視や飲酒運転など事故態様が悪質であったり、ひき逃げや証拠隠滅など事故後の行動が極めて悪質といえるような場合には、基準よりも増額した慰謝料が認定される傾向にあります。

また、後遺障害逸失利益(後遺症障害によって労働能力が低下しなければ将来得られた利益を指します)が認められないような場合であっても、後遺障害が残存したことにより、不利益が生じているようなときには、慰謝料を基準よりも増額して認定する裁判例もあります。

慰謝料を請求するにあたっては、被害者側の事情のみならず、加害者側の事情を十分に考慮する必要があるといえます。

交通事故の示談交渉にあたっては、弁護士に相談を!

以上のように、交通事故の加害者に損害賠償請求することのできる慰謝料には、一定の基準があり、また、個々の事情によっては基準よりも増額する可能性があります。

もっとも、ご紹介した慰謝料の基準は、裁判や弁護士が示談交渉を行う際に用いられる基準であり、交通事故被害者ご本人が、加害者加入の任意保険会社と直接示談交渉を行う場合には、上記の基準よりも低い慰謝料が提示されることが多々あります。

弁護士にご依頼いただいた場合、加害者加入の保険会社との交渉一切を引きうけ、適切に損害額を算定したうえで、裁判所の基準に近い金額での示談交渉を行うことができます。

交通事故の被害に遭われたら、まずは、弁護士にご相談ください。