被害者請求とは?―請求の流れと請求に必要書類―

被害者請求とは?

交通事故の被害にあってしまった場合、事故の被害者の側から、事故の加害者が加入している自賠責保険会社に対して、直接、保険金を請求したり、後遺障害等級認定申請をすることを被害者請求といいます(自動車損害賠償保障法16条)。

自賠責保険会社に請求できる保険金額には、損害ごとに上限があり、傷害部分については120万円、後遺障害部分については75万円から4000万円(認定された後遺障害等級ごとに保険金金額が決められています)、死亡部分については3000万円が上限となっています。

なお、自賠責保険では、自動車の損壊等の物的損害については、補償の対象となっていません。物的損害の請求は、加害者が加入している任意保険会社に請求するようにしましょう。

被害者請求をするまでの流れ

被害者請求は、加害者が加入している自賠責保険会社に対して請求するものですので、まずは、加害者に加入している自賠責保険会社を確認しましょう。その後、加害者の自賠責保険会社に連絡し、被害者請求したいことを伝えましょう。

自賠責保険会社から被害者請求書類が送られてきますので、書類に必要事項を記入して、損害保険料率算出機構(自賠責損害調査事務所)に提出することとなります。

もっとも、被害者請求にあたっては、被害者自身で準備しなければならない書類も複数あります。

以下では、被害者請求にあたって必要となる書類とその取得方法について、請求する損害の種別ごとに詳しく解説していきます。

傷害、後遺障害、死亡の損害の請求に共通して必要となる書類

自賠責保険支払請求書兼支払指示書

■入手先:加害者の自賠責保険会社

自賠責保険会社から送られてくる被害者請求書類の中に入っています。請求者の住所や保険金振込先口座、交通事故の発生日時や当事者、加害者の自賠責保険証明書番号等を記載する必要があります。交通事故証明書を参照しながら記入しましょう。

交通事故証明書

■入手先:自動車安全運転センター

入手方法としては、郵便局での払込により申請する方法、自動車安全運転センター事務所窓口で申請する方法、自動車安全運転センターホームページから申請する方法があります。

加害者の任意保険会社が事故後の対応を行っている場合には、任意保険会社が既に交通事故証明書を取得している可能性もありますので、問い合わせてみましょう。

なお、警察への届出のない事故については交通事故証明書の発行はされませんので、交通事故被害に遭った場合には、軽微な事故であっても必ず警察に届けるようにしましょう。

請求者本人の印鑑証明書

■入手先:お住まいの市区町村役場

事故発生状況報告書

■入手先:加害者の自賠責保険会社

自賠責保険会社から送られてくる被害者請求書類の中に入っています。

どのように交通事故が起こったのかという事故の態様を図示し、その図の内容を文章で説明する必要があります。

休業損害証明書、源泉徴収票、確定申告書の写しなど

■入手先:勤務先等

交通事故が原因で、仕事を休んでしまい休業損害が発生したときに提出する書類で、休業損害証明書は、自賠責保険会社から送られてくる被害者請求書類の中に入っています。

会社等に勤務される方や公務員の方は、勤め先に休業損害証明書を作成してもらい、源泉徴収票とともに提出することとなります。個人事業主は、確定申告書の写しを提出します。

通院交通費明細書

■入手先:加害者の自賠責保険会社

自賠責保険会社から送られてくる被害者請求書類の中に入っています。病院への通院のためにタクシーや公共交通機関を利用した場合の交通費を請求するために提出するものです。公共交通機関の場合、利用した交通機関及び区間等による通常の料金を記載するので足りますが、タクシーを利用した場合には領収書の提出も必要となります。

傷害部分の損害を請求する場合に追加で必要となる書類

診断書及び診療報酬明細書

■入手先:受診した医療機関

病院での治療費を請求する際に、提出する必要があるものです。多くの場合、医療機関での治療費は、加害者が加入している任意保険会社が立て替えており、その場合、任意保険会社も診断書及び診療報酬明細書を保持しています。

そこで、診断書及び診療報酬明細書については、加害者の任意保険会社に写しの送付を請求すると良いでしょう。

調剤報酬明細書

■入手先:調剤薬局

薬剤の費用についても、加害者の任意保険会社が立て替えていることもあるため、加害者の任意保険会社に問い合わせてみましょう。

施術証明書、施術費明細書

■入手先:施術を受けた整骨院や接骨院

整骨院での施術を受けた場合に提出する必要があるものです。整骨院での施術費についても、加害者の任意保険会社が立て替えている場合もありますが、裁判例において、整骨院での施術が損害と認められるには、原則として医師の指示があることが条件となっています。

そのため、加害者の任意保険会社が立て替え払いをしないこともあります。この場合には、被害者自身で、施術を受けた整骨院や接骨院から書類を取り寄せましょう。

住民票または戸籍抄本(被害者が未成年の場合)

■入手先:市区町村役場

付添看護自認書

■入手先:加害者の自賠責保険会社

自賠責保険会社から送られてくる被害者請求書類の中に入っています。被害者の近親者が被害者に付き添って看護する必要があり、実際に付き添い看護を行った場合に提出するものです。

後遺障害等級認定申請及び後遺障害の損害を請求する場合に追加で必要となる書類

後遺障害診断書

■入手先:入院、通院した医療機関

後遺障害診断書の様式は、自賠責保険会社から送られてくる被害者請求書類の中に入っています。交通事故による受傷が原因で後遺症が残った場合、その後遺症について保険金を請求するためには、後遺障害等級認定を受ける必要があります。

そして、後遺障害等級認定の申請をするために必要となるのが、後遺障害診断書です。

レントゲン、MRI、CTなどの画像データ

■入手先:検査を行った医療機関

適切に後遺障害等級認定を行ってもらうために、交通事故での受傷に関する画像データを提出する必要があります。

死亡部分の損害を請求する場合に追加で必要となる書類

死亡診断書または死体検案書

■入手先:被害者の死亡が確認された病院

戸籍(除籍)謄本(省略のないもの)

■入手先:市区町村役場

死亡事故の場合には、死亡した被害者が加害者に対して請求することのできた慰謝料について、相続人が相続することとなります。

そのため、被害者の死亡が確認できる除籍謄本に加えて、相続人の除籍謄本も必要となります。

被害者請求にあたっては、弁護士に相談を!

以上のように、被害者請求をするにあたっては多くの書類を準備する必要があり、被害者自身で全ての書類を準備するのは非常に大変です。

弁護士にご相談いただいた場合、書類の取得、作成の代行はもちろんのこと、後遺障害等級認定にあたって、適切な等級認定を受けられるようアドバイスいたします。

交通事故の被害に遭われたら、まずは、弁護士にご相談ください。