自転車事故の過失割合(5)

最近は自転車での通勤通学が増え、また自動車保険や傷害保険の弁護士費用等補償特約(通称「弁特」)に加入する方が増えてきています。これにより自転車での交通事故が賠償問題に発展するケースが増えてくるものと考えられます。そこで、そもそもこのような交通事故に巻き込まれないようにするため、そして万が一巻き込まれたときに多額の責任を負うことのないように、前回のコラムに引き続き過去の自転車同士の交通事故の内容と過失割合を紹介し、自転車に乗る際の注意点を示したいと思います。

過去の裁判例

事故現場は、南北に通じる歩車道(自転車走行可能)の区別のある道路(以下「南北道路」といいます。)に西から東へ通じる一方通行道路(以下「東西道路」といいます。)が接続する丁字路交差点付近であり、信号機による交通整理は行われておらず、東西道路の丁字路交差点手前の左右の見通しは不良で、交差点西詰で一時停止規制がされていました。

Yは、深夜0時ごろ、Y車両の前照灯を下向けにし丁字路交差点で左折するために東西道路を東進し、一時停止規制に従ってY車両を停止させました。そして、左折のためにY車両を発進させ、南北道路の歩道付近に差し掛かったところ、折から南北道路を無灯火で南進していたX運転の自転車と衝突した(大阪地判平成29年2月7日(自保2000号102頁))。

過失割合はどのように判断されたのか?

  • X対Y=30対70

なぜこのような過失割合の判断となったのか?

  • ①Yは、本件の丁字路交差点を左折するに際して、左方の安全確認を怠った過失がある。
  • ②XはY車両と衝突するほぼ直前まで同車の存在を認識することのなく、東西道路に進入する前に前方左右の安全を十分に確認しなかった過失がある。
  • ③事故現場は信号機により交通整理のされていない見通しの悪い交差点であり、Yは一時停止規制に従って一時停止していた。
  • Xは右側通行をし、Y車両の左方から丁字路交差点に進入した。
  • X車両が無灯火であり、YによるX車両の発見が遅れたこと。
  • X車両が自転車であり、Y車両が四輪車であること。

まとめ

上記事故で注目すべきは、X車両が無灯火であったことと、右側通行をしていたことです。
まず、道路交通法52条により、自転車も夜間は灯火義務があり、Xが無灯火であったことはYによるX車両発見を困難にし、Yによる回避動作が遅れがちになります。昨今、自転車の無灯火は、警察により厳しく取り締まられていますが、無灯火のままの自転車も多く存在します。自転車にライトをつけることは、第一に自らの身を守ることにつながり、それにもかかわらず事故に遭遇した場合に、自らの責任を軽くすることにも繋がります。夜間走行の際は、点灯の癖づけが肝要かと思われます。

次に、X車両が右側通行することは、本件のように、自動車から見て左方から交差点に進入する場合に、自動車にとって自転車が目の前に突然現れることになり、自動車による回避行動が遅れます。それゆえ、自転車の過失の加算理由となります。

なお、自転車を含む軽車両は、原則として、道路の左側部分を通行しなければなりませんが(道路交通法17条4項)、これはあまり認知されておらず、多くの自転車が右側通行をしています。警察による取り締まりもほとんど行われていないのが現状です。

しかし、いざ交通事故に巻き込まれた場合、右側通行をしていることは、自らの首を絞めることにつながりかねません。それゆえ、本コラムを読まれている皆さんは、自転車も左側通行であることを肝に銘じ、自転車を利用する際は、それを意識して走行をしてください。