自転車事故の過失割合(3)

最近は自転車での通勤通学が増え、また自動車保険や傷害保険の弁護士費用等補償特約(通称「弁特」)に加入する方が増えてきています。これにより自転車での交通事故が賠償問題に発展するケースが増えてくるものと考えられます。そこで、そもそもこのような交通事故に巻き込まれないようにするため、そして万が一巻き込まれたときに多額の責任を負うことのないように、前回のコラムに引き続き過去の自転車同士の交通事故の内容と過失割合を紹介し、自転車に乗る際の注意点を示したいと思います。

過去の裁判例

 線路下のトンネル出入口付近で見通しが良くなく、道路の道幅が約2メートルと狭い自転車専用道路(本件道路)において、原告(X)は、自転車によって相当程度の速度を保ったままトンネルに進入して北上し、そのままトンネル出口に差し掛かったところ、当該道路の中央線付近を南に向かって進行していた被告(Y)が運転する自転車と衝突した(本件事故)。(大阪地判平成30年11月16日(自保2038号138頁))。

過失割合はどのように判断されたのか?

 X対Y=40対60

なぜこのような過失割合の判断となったのか?

  1. Yは、道路中央から左の部分を通行した上で、前方を注視し、道路状況に応じてハンドル、ブレーキ等を適切に操作して、対向する自転車と衝突しないように運転すべき注意義務を負っていたが、これを怠り、前方の見通しが必ずしもよくないにもかかわらず、本件道路中央よりやや右寄りを走行させた。
  2. Xは、本件道路は幅が狭く、対向車と衝突する危険性が高く、前方を注視し。前方の見通しが悪い場合は、適宜速度を調整するなどして、対向車を発見した場合にはこれを回避すべきであったにもかかわらず、相当程度の速度を保ったまま本件トンネルに進入し、被告を発見したのちも回避措置が遅れ事故につながった。
  3. 本件道路は道幅が狭く、対向車との衝突の危険性が大きい。
  4. 自転車においては、その速度からして一般的に回避が容易であること。
  5. 自転車では左側通行について必ずしも徹底されておらず、中央部分をはみ出したことを大きく評価するべきでないこと。
  6. Xの速度が速かったことが事故の損害を拡大させたこと。

まとめ

上記事故は、線路下の道幅の狭い見通しの悪いトンネルの出入口付近での自転車同士の衝突事故ですが、自転車も道路交通法上左側通行となっていることから、中央線より右側寄りを走行していた被告は、いわば逆走状態であり、自動車同士の事故であれば原告の過失は通常存在しないとの判断される事案と言えます。
しかし、自転車同士の場合は、自転車が左側通行であることは、平成25年の道路交通法の改正で規定されたものであり、上記事故が平成26年に発生したものであって、左側通行が徹底されていないことを理由として、逆走であることは大きく考慮されておらす、自転車は回避可能性が高いことを理由として上記のような判断となっています。
現在道路交通法の改正から6年以上が経過していることから、現在同様の判断が出されるかは分かりませんが、自転車が自動車に比べて速度も遅く、減速も容易であり、回避可能性が高い点を考慮に入れると、狭い道路を走行する際は、減速等をするなど注意深く走行する必要があると思われます。

最後に

大阪A&M法律事務所の弁護士は、これまで数々の交通事故事件を解決してきました。予期せぬ自転車事故に巻き込まれた際は、是非当事務所の経験豊富な弁護士にご依頼ください。